生誕100年水上勉展~生きるということ~
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第1章 水上勉と故郷
水上勉は1919年3月、福井県大飯郡本郷村岡田(現・おおい町)に、宮大工の父覚治と母かんの次男として生まれました。九歳の時に故郷を離れ、京都の瑞春院の徒弟となりました。京都の花園中学校を卒業すると還俗し、働きながら立命館大学文学部国文科に通いますが、中途退学して上京。新聞社や映画配給社など様々な職業を経験しました。東京の空爆が激しくなると、1944年、郷里に疎開して大飯郡青郷国民学校高野分校に代用教員として赴任し、約一年半勤めました。
水上は「人は生れた地から球根をもらう」と述べています。1章では家族や代用教員時代などを描いた随筆を取り上げ、作家となる前の水上勉を育んだ故郷での生活や経験を紹介しました。
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第2章 水上勉のまなざし
終戦後、水上勉は代用教員を辞めて上京し、友人と出版社虹書房を立ち上げました。執筆依頼のため宇野浩二を訪ねたことを機に宇野を文学の師としました。1948年『フライパンの歌』がベストセラーになりましたが、生活は苦しく様々な職業を転々としながら執筆を続けました。
1959年、『霧と影』が社会派推理小説として脚光を浴びました。また、水上勉は水俣湾の公害に衝撃を受け取材し、ミステリー小説「不知火海沿岸」を発表。同作に加筆した『海の牙』を刊行し、1961年探偵作家クラブ賞を受賞。同年には、「雁の寺」で直木賞を受賞し、作家としての地位を不動のものとしました。
水上勉は病弱者や障がい者などの社会的な弱者に寄り添うとともに、小さな生き物や草木などにも関心を寄せました。水上が注いだあたたかなまなざしを紹介しました。
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第3章 水上勉から若い世代へ
戦争中、分教場での代用教員時代に、村の子どもらとともに芝居をやったり、その子らに創作童話を聞かせたりする授業を行っていました。その後も『家なき子』や『きつねのさいばん』など児童文学名作のダイジェスト版や偉人伝を執筆。1972年には、蛙を主人公に弱肉強食の世界を描いた児童文学『蛙よ、木からおりてこい』を刊行しました。1980年、水上勉は演劇企画と出版を行う三蛙房を立ち上げ、旗揚げ公演としてアンデルセンの生涯を描いた「あひるの靴」を行うとともに、『蛙よ、木からおりてこい』を改題し『ブンナよ、木からおりてこい』を刊行しました。三蛙房はその後も『釈迦内柩唄』などを発行するとともに演劇活動を行いました。
第3章では、水上勉の『あひるの靴』『ブンナよ、木からおりてこい』などを取り上げ、誰もが生かされているということや生きることの喜びなど、水上が作品に込めた思いを紹介しました。
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水上勉展クイズを実施しました。
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こたえ
1 きょういん(教員)2 がん(雁)
3 あんでる
4 かえる
5 てんあんもん(天安門)
お答えいただいた方に缶バッジをプレゼントしました。
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