福井県ふるさと文学館コレクション展 没後30年則武三雄展
ちまちま人形の則武さんが紹介してくれる動画
「詩人則武三雄ってどんな人?~福井に文学の種をまいた詩人~」
概 要
則武三雄は福井の文学に大きな影響を与えた詩人で、終戦後、三好達治の誘いを受け三国へ移住しました。その後、『紙の本』『葱』などの詩集を発表し、独自の出版活動を行いながら、広部英一、岡﨑純、南信雄、川上明日夫、荒川洋治など多くの詩人を育てました。今も、その魅力ある人柄と作品は愛され続けています。
本年は、則武三雄の没後30年にあたります。現在、当館で開催中の「没後30年則武三雄展」を多彩なコレクションを交えてデジタルで紹介します。
本年は、則武三雄の没後30年にあたります。現在、当館で開催中の「没後30年則武三雄展」を多彩なコレクションを交えてデジタルで紹介します。
第1章 則武三雄の作品世界
則武三雄は1909(明治42)年、鳥取県米子市に生まれ、19歳で朝鮮に渡り約17年間を過ごしました。終戦後は師・三好達治の誘いを受け、三国へ移住、三好達治が三国を去ったあともこの地に留まりました。
福井市に居を移してからは、詩集『紙の本』『葱』や随筆集『ズイのズイのズイ』『三国と三好達治』、福井の文学をまとめた『郷土文学年表』『えちぜんわかさ文学館』など多彩な分野の作品を発表しました。ここでは、則武三雄の作品の魅力を紹介します。
福井市に居を移してからは、詩集『紙の本』『葱』や随筆集『ズイのズイのズイ』『三国と三好達治』、福井の文学をまとめた『郷土文学年表』『えちぜんわかさ文学館』など多彩な分野の作品を発表しました。ここでは、則武三雄の作品の魅力を紹介します。
則武三雄の作品
則武三雄は81年の生涯で、約40冊の詩集や随筆などの著書を出版しました。生まれ育った鳥取や長く過ごした朝鮮のこと、近しい人たちや日々の暮らしのことなど、様々なことに思いを馳せた多くの作品を発表しています。
特に、行方の分からなくなった朝鮮の友・白石(ペクソク)を詠った詩「葱」は、則武の文学忌「葱忌」の由来ともなった代表作として親しまれています。
葱
葱を垂げていた白石。
白と云う姓で、石と云うは名の詩人。
僕も五十三歳になって葱を垂げてみた。
優った詩人の白石。無名の私。
はるかに二十年の歳月が流れている。
友、白石よ、生きていますか。
生きてなさいね。
白と云う姓 石は名の朝鮮の詩人。
則武三雄『葱』より
則武三雄肖像 則武三雄『鴨緑江』(1942年、則武三雄私刊)
特に、行方の分からなくなった朝鮮の友・白石(ペクソク)を詠った詩「葱」は、則武の文学忌「葱忌」の由来ともなった代表作として親しまれています。
葱
葱を垂げていた白石。
白と云う姓で、石と云うは名の詩人。
僕も五十三歳になって葱を垂げてみた。
優った詩人の白石。無名の私。
はるかに二十年の歳月が流れている。
友、白石よ、生きていますか。
生きてなさいね。
白と云う姓 石は名の朝鮮の詩人。
則武三雄『葱』より
則武三雄肖像 則武三雄『鴨緑江』(1942年、則武三雄私刊)
則武三雄と福井の文学
則武三雄は、古事記から水上勉「雁の寺」(1961年直木賞受賞作)など現代の作品まで、福井を描いた文学を展望した『えちぜんわかさ文学館』なども刊行しています。
また、越前和紙をこよなく愛し、和紙職人岩野平三郎(二代目)とも親交がありました。北荘文庫から出版した『紙の本』『幻しの紙』『紙漉く人』は、装幀に今立町(現・越前市)で漉かれた和紙が使われています。
則武は福井の文学を掘り起こすとともに、地方で文学活動をすることの意味を見つめ直しました。
草稿「大東中学校校歌」
則武三雄『紙の本』
色紙「まぼろしの紙」(後期)
書「ひとりの子供が歩いている」(前期)
書「名もないひとの心...」(前期)
左ー書「城址」(個人蔵) 右ー書「草枯」(後期)
また、越前和紙をこよなく愛し、和紙職人岩野平三郎(二代目)とも親交がありました。北荘文庫から出版した『紙の本』『幻しの紙』『紙漉く人』は、装幀に今立町(現・越前市)で漉かれた和紙が使われています。
則武は福井の文学を掘り起こすとともに、地方で文学活動をすることの意味を見つめ直しました。
草稿「大東中学校校歌」
則武三雄『紙の本』
色紙「まぼろしの紙」(後期)
書「ひとりの子供が歩いている」(前期)
書「名もないひとの心...」(前期)
左ー書「城址」(個人蔵) 右ー書「草枯」(後期)
第2章 則武三雄と作家たち
則武三雄は福井県立図書館職員として勤務する傍ら、1951年、自宅に北荘文庫を創設し、福井に根をおろした独自の出版活動を展開しました。北荘文庫は文化サロン的な役割を果たし、広部英一や岡﨑純、南信雄、川上明日夫、荒川洋治らを育てました。
則武三雄宛て中野重治書簡(後期)
則武三雄宛て中野重治書簡(後期)
北荘文庫
則武三雄は北荘文庫を立ち上げ、自身の著作や文学雑誌『地方主義』を発行しました。また、出版手段を持たなかった地域の創作者の詩集や評論を次々と世に送り出し、県内外で注目を浴びました。
広部英一(1931~2004)
福井大学在学中に則武に出会い師事。北荘文庫より第二詩集『木の舟』刊行。
岡崎純(1930~2017)
福井師範学校在学中に詩作を始め、則武に出会い師事。第一詩集『重箱』を北荘文庫より出版。
南信雄(1939~1997)
20代に則武と出会う。第二詩集『長靴の音』を北荘文庫より出版。
川上明日夫(1940~)
20代に則武と出会い師事。1967年、第一詩集『哀が鮫のように』を北荘文庫より出版。
北荘文庫表札
北荘文庫出版書籍 展示風景写真
広部英一(1931~2004)
福井大学在学中に則武に出会い師事。北荘文庫より第二詩集『木の舟』刊行。
岡崎純(1930~2017)
福井師範学校在学中に詩作を始め、則武に出会い師事。第一詩集『重箱』を北荘文庫より出版。
南信雄(1939~1997)
20代に則武と出会う。第二詩集『長靴の音』を北荘文庫より出版。
川上明日夫(1940~)
20代に則武と出会い師事。1967年、第一詩集『哀が鮫のように』を北荘文庫より出版。
北荘文庫表札
北荘文庫出版書籍 展示風景写真
則武さんちまちま人形
ちまちま人形作家高山美香氏制作
蔵書の一冊一冊のタイトルが分かるほど詳細に再現されています。
実物大の本棚も復元しているので、あわせてご覧いただけます。
則武さんのちまちま人形にちなんで豆本をつくってみました
蔵書の一冊一冊のタイトルが分かるほど詳細に再現されています。
実物大の本棚も復元しているので、あわせてご覧いただけます。
則武さんのちまちま人形にちなんで豆本をつくってみました
展示資料一覧
展示蔵書一覧(本棚復元)
則武さんのクロスワードパズル
チャレンジしていただいた方には文学館にて、プレゼント進呈します
まとめ
則武三雄は生涯を通して、詩人として言葉を紡ぐとともに、地域に根差した出版活動を行い、後進を育てました。則武は、福井に文学の種をまいた詩人、と言っても過言ではありません。本展では、没後30年を機に則武三雄を取り上げ、作品世界や交流などを紹介しています。
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