越前奇談怪談集(2)大火を煽る大法師

マット・マイヤー氏のイラストと現代語訳

画像:大火を煽る大法師
 寛文九年(一六六九)、福井大火の際には御城も類焼した。この大火事の前には様々な怪異があった。なかでも、朝市に出る者たちが連れ立って歩いていたところ、甲冑を身に着けた多くの武者が、屋根の上を歩いていくのを見たという。
 さて、その後、大火事が起こり、松岡から藩主の昌勝公が鎮火のために福井に向かわれた。丸山(福井市)のこちら側から、御馬上で福井方面の様子を御覧になると、煙の中に大きな法師が団扇を持って、あちらこちらへ火を扇ぎ着けているのが見えた。昌勝公は「この火事は防ぎ難いぞ」と仰ったとのことである。

資料原本と翻刻文

原本画像を見る➤A0143-02735 「謾録」(松平文庫、当館保管)18-19コマ

画像:大火を煽る大法師原本
一 寛文九年福井大火、御城モ御類焼也、其以前様々怪異アリ、中ニモ、朝市ニ出ル者打連テ行ケルニ、甲冑鎧フタル武者数多屋ノ上ヲ行ヲ見シトナリ、扨、其後大火中ニ松岡ヨリ昌勝公御防ノ為御越有シニ、丸山ノコナタヨリ御馬上ニテ御覧有ケルハ、煙ノ中ニ大成法師カ団扇持テ彼方此方ヘ火ヲアヲキ付ルヲ見給ヒテ、此火ハ防キ難キソト仰有ケルト也、(以下略)