越前奇談怪談集(11)九頭竜
マット・マイヤー氏のイラストと現代語訳
八重巻(福井市)という所に白山宮がある。
寛平元年(八八九)六月、平泉寺の白山権現が僧侶たちの前に姿を変えて現れ、その尊像を川の水に浮かべられた。すると一つの身体に九つの頭を持つ九頭龍が現れて、この尊像を上にいただき、黒龍明神(福井市舟橋町)の向かい岸に留まった。そこで、この川を九頭龍川と呼ぶのである。(中略)
この尊像を水に浮かべられたとき、尊像は荒く編んだ「こもむしろ」でグルグル巻きにくるまれていたので、取り上げられた場所を八重巻の里といったのである。また、その龍の尾が、はるか彼方にまで長かったので、その場所を尾永見の里(大野市牛ヶ原)というのだとか。
寛平元年(八八九)六月、平泉寺の白山権現が僧侶たちの前に姿を変えて現れ、その尊像を川の水に浮かべられた。すると一つの身体に九つの頭を持つ九頭龍が現れて、この尊像を上にいただき、黒龍明神(福井市舟橋町)の向かい岸に留まった。そこで、この川を九頭龍川と呼ぶのである。(中略)
この尊像を水に浮かべられたとき、尊像は荒く編んだ「こもむしろ」でグルグル巻きにくるまれていたので、取り上げられた場所を八重巻の里といったのである。また、その龍の尾が、はるか彼方にまで長かったので、その場所を尾永見の里(大野市牛ヶ原)というのだとか。
資料原本と翻刻文
一 八重巻といふ所に白山の宮あり、寛平元年の六月、平泉寺の権現、衆徒の僧に示現おハしまして、尊像を此流水にうかめ奉る、ときに一身九頭の龍出てこれをいたゝき、黒龍明神のむかひの岸にとゝまる、されハ此川を九頭龍川といへり、(中略)、かの尊像を水にうかめ奉るとき、あらこも八重にまとひたれハ、とりあけまゐらせし所を八重まきのさとゝいひ、その龍の尾のはるかになかゝりけれハ、その所を尾なかみの里といふとかや