越前奇談怪談集(22)隅櫓下の巨大ゴイ
マット・マイヤー氏のイラストと現代語訳
松平楷五郎君は、治好公の男子で、斉承公の弟である。病身のため、亡くなるまで福井に在住されていた。私、慶永が天保十四年(一八四三)に初めて福井に入るまでは、御座所にお住まいになっていた。
ある日、楷五郎君が川狩り(川での漁)に行かれたことがあった。お付きの人は、その留守を幸いに、この隅櫓に登って遠くを眺めていた。すると、堀の下に長さがおおよそ二間ばかり(約三・六メートル)もある巨大なコイが泳いでいたのを見つけ、恐れおののいて、ただちに櫓から逃げ帰ったとのことである。
波多野頼太郎の親もここで巨大ゴイを見た、と頼太郎が語っていた。
ある日、楷五郎君が川狩り(川での漁)に行かれたことがあった。お付きの人は、その留守を幸いに、この隅櫓に登って遠くを眺めていた。すると、堀の下に長さがおおよそ二間ばかり(約三・六メートル)もある巨大なコイが泳いでいたのを見つけ、恐れおののいて、ただちに櫓から逃げ帰ったとのことである。
波多野頼太郎の親もここで巨大ゴイを見た、と頼太郎が語っていた。
資料原本と翻刻文
一 松平楷五郎君ハ、治好公之男ニて、斉承公ノ弟なり、病身を以て逝去迄福井ニ在住し給ふ、余、天保十四年初入部迄ハ御座所ニ住給ふ也、一日、楷五郎君、川狩ニ入らせられたり、楷五郎君の随従之人、留守を幸ニ此角櫓へ登りて遠眺の折柄、堀の下ニ大鯉(長サ凡二間斗)游ふをミるかいなや、畏懼のあまり櫓より逃帰りたりと、波多野頼太郎の親もこれにありて大鯉を見たりと、其子頼太郎のはなしなり