子ども室にあたらしくはいった本のうち、おすすめの本をご紹介します。
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あたらしくはいった本のリストはこちら→ えほん ものがたり ちしき
(2021.3.25up)
『
かじ屋と妖精たち イギリスの昔話』脇明子∥編訳 岩波書店 2020年9月
豪胆なかじ屋が、妖精にさらわれた息子を取り戻しに行く表題作のほか、賢く勇敢な娘が病気の姉さんと王子を救う「ハシバミわりのケイト」、「三びきの子ブタのお話」や「ジャックと豆の木」のような有名なお話など、イギリスの昔話を31編収めた本です。
【ここがおすすめ!】
一人暮らしのおばあさんが大事に育てたチューリップの花を、妖精たちが赤ちゃんのゆりかごにする「チューリップ畑」は、この本の中でもとりわけ幻想的で美しいお話です。ほかにも、妖精が登場する話や巨人退治の話、呪いにかけられた王子の話など、不思議な物語の世界にひたれます。短いお話が多いので、朝読書の時間などに1つずつ読むのもおすすめです。(酒井)
(2021.2.25up)
『名探偵カッレ危険な夏の島』 アストリッド・リンドグレーン∥作 菱木晃子∥訳 平澤朋子∥絵 岩波書店 2020年12月
名探偵カッレシリーズ3巻目。最終巻です。
地主館での殺人事件から1年あまり。カッレ、アンデッシュ、エヴァロッタの白バラ軍三人組は、夏休みを迎えましたが、家の手伝いばかりしていました。そんなある日の夜、赤バラ軍と一戦を交えることになり、親に置手紙を残して家を抜け出します。城跡で命がけの決戦を繰り広げたその帰り道、カッレたち白バラ三人組は、若い大学教授とその五歳の息子ラスムスの親子が誘拐される現場に出くわしてしまいます。エヴァロッタはとっさに、誘拐犯の車に乗り込み、カッレとアンデッシュは、跡をつけていきますが・・・。
誘拐犯の狙いは?カッレたちは、親子を救うことができるのか?夏の島で、ハラハラドキドキの冒険が繰り広げられます。
【ここがおすすめ!】
シリーズ3作目の本作では、エヴァロッタの魅力が光ります。まず、誘拐犯の車に乗り込む度胸。車の中から、『ヘンゼルとグレーテル』のように、跡を残す機転。そして、5歳のラスムスの「母親がわり」になろうとします。カッレ、アンデッシュとの信頼関係があってこその大活躍に3作を通じての成長を感じます。
5歳のラスムスの人物像も魅力的。実は、誘拐犯が狙っているもののありかを知っており、相手に無邪気にもらしてしまうなど、やきもきさせられますが、誘拐犯のひとりに「ぼくは、親切だと思うよ、人さらいは」と発言し、まわりの心を動かすなど、ほろっともさせられます。
人物像も魅力的な作品ですが、緻密で、スリリングなストーリー展開と、ラストでの爽快感。子ども向け探偵小説の傑作といえるでしょう。このお話の原書の初版は1953年。刊行後約70年となりました。新たな訳でこれからもぜひ読み継がれてほしい作品です。(鷲山)
(2021.1.9up)
『なにかがいる』佐藤雅彦∥作 ユーフラテス∥作 福音館書店 2020年11月
「しゃしんの なかに なにが かくれているのか、さがしてみよ。」と始まり、しげみ、草むら、砂の中などの写真に隠れた生き物を探す科学絵本です。
冒頭では、隠れている生き物のシルエットが写真と並んで示されヒントとなっていますが・・・、だんだん難易度があがります。
生き物たちの気配を感じ、見つけるよろこびが味わえます。
【ここがおすすめ!】
写真を、じっくりゆっくり、目を凝らし、生き物を探してみてください。
隠れている生き物たちを見つけたときには、思わず、「あっ!」と声をたててしまうほどです。
まずは、↑上に掲載した表紙の写真を、見てください。なにかが見えてきませんか?(鷲山)
(2020.12.20up)
『かるいお姫さま』
ジョージ・マクドナルド∥作 モーリス・センダック∥絵 脇明子∥訳 岩波書店
赤ちゃんのときに魔女から呪いをかけられて、身も心も重さをなくしてしまったお姫さまは、ちょっとしたことでふわふわと宙に浮きあがってしまい、いつもけらけら笑ってばかりいました。
学者たちはお姫さまが泣くことができれば、重さを取り戻せると考えますが、悲しむことを知らないお姫さまにそれは不可能でした。
ある日、お姫さまは宮殿のそばの湖で、すてきな王子さまに出会います。
王子さまは美しいお姫さまに一目で恋をし、ふたりは毎晩いっしょに湖を泳いで遊びますが、お姫さまには恋心というものがわかりません。
そんなとき、意地の悪い魔女が、今度は湖の底に穴をあけて水を枯らそうとします。
湖で泳ぐのが何よりの楽しみだったお姫さまは、湖の水かさが減れば減るほどやせ細り、衰弱していきました。
それを知った王子さまは、お姫さまを救うために、自分の命を犠牲にして湖の穴をふさぐことを決意します。
王子さまが水に沈んでいくのをじっと見つめていたお姫さまは…。
【ここがおすすめ!】
1860年代に発表され、読み継がれてきたイギリスの古典的ファンタジー作品が、絵本『かいじゅうたちのいるところ』などの作者センダックによる挿絵付きの愛蔵版として刊行されました。
魔女の呪いに、美しいお姫さまと王子さまの恋と、これぞ!というようなロマンチックなおとぎ話ですが、語り口は軽妙で、随所に皮肉のきいたユーモアがちりばめられています。
沈みゆく王子さまと事態をよくわかっていないお姫さまとの滑稽なやりとりの切なさ、お姫さまが重さを取り戻すシーンの美しさは必見です。(酒井)
(2020.11.29up)
『しょうぼうしのくまさん』
フィービ・ウォージントンとオリバー・ウィリアムス∥さく・え こみやゆう∥やく 福音館書店 2020年9月
消防士のくまさんは、ぴかぴかの赤い消防車を持っています。
電話で助けを求められると、消防車に飛び乗って、「からんからん!」と鐘を鳴らしながら急いで向かいます。
木から降りられなくなった猫を助けたり、納屋の火事を消し止めたりと、忙しい1日を送ったくまさんは、家に帰っておいしいごはんを食べ、ぐっすり眠ります。
せっせと働く消防士のくまさんの1日を、やさしい言葉と温かみのある絵で描いた絵本です。
ボートで荷運びの仕事をするくまさんの1日を描いた『ボートやのくまさん』も同時期に刊行。
【ここがおすすめ!】
『パンやのくまさん』や『ゆうびんやのくまさん』など、仕事をするくまさんの1日を描き、長年愛されてきた「くまさん」シリーズの続編です。
愛らしい見た目ながら、礼儀正しく誠実に仕事をこなすくまさんが、なんといっても魅力的。
この『しょうぼうしのくまさん』でも、救助や消火に大活躍の一方で、疲れていてもベッドに入る前にきちんと消防車の手入れをするような実直さを見せてくれます。
単純でわかりやすいストーリーで、幼い子からおすすめできます。(酒井)
(2020.10.13up)
『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』
奥修∥文・写真 福音館書店 2020年9月
珪藻とは、大きさ0.005ミリから0.5ミリの小さな藻です。川や海などの自然の水をくんで顕微鏡でのぞくと、ほかの小さな生き物にまじって珪藻が見つかります。珪藻は、ガラスの殻に包まれていて、いろいろなかたちをしています。
珪藻アート作家の奥修さんは、珪藻を採集して、ていねいに洗って、並べて作品をつくります。そのプロセスは非常に繊細な作業です。顕微鏡をのぞきながら、まつげや針先で作った道具などを使います。少しの風でもとんでしまいますから、セキやくしゃみも我慢して作業していきます。
完成したアート作品のサイズは1ミリ前後。見るときにも顕微鏡をつかって精密な作品を楽しみます。
本書には、珪藻アート作品が多数収められています。光のあてかたで、さまざまな色に輝く、珪藻アートの世界が美しい写真で楽しめます。
【ここがおすすめ!】
光のあたりかげんで七色に輝く珪藻を使っての作品は、目をみはる美しさ!
世界一小さいとされる珪藻アート。その採集から制作までのプロセスを知ることでより深くアートの世界を楽しめます。
珪藻は肉眼で見ることができず、存在を意識していない方も多いかもしれませんが、「地球上でもっとも重要な植物」ともいわれることもあるそうです。珪藻についての知識も深まります。(鷲山)
(2020.09.13up)
『きみが、この本、読んだなら ざわめく教室編』
戸森しるこ、おおぎやなぎちか、赤羽じゅんこ、池田ゆみる∥作 吉田尚令∥画 さ・え・ら書房 2020年3月
小学5年生の広地(りく)は、同級生の貝原さんがいつも人形を持ち歩いていて、しかもクラスの誰もそれを気にしていないことを不思議に思っていました。
ある日、広地が貝原さんのことをお母さんに話してみると、お母さんは、まるで小説の『りかさん』みたいだと言いました。
その本が人形と小学生の女の子の話と聞いて興味をもった広地は、『りかさん』を読んでみます。
そして、貝原さんにも読んでもらいたいと考えて…。
転校生の男の子と無口な女の子の、本と人形を介した交流を描く「クロエ・ドール」など、「本をすすめる」ことをテーマにした4つの短い物語が収められた本です。
【ここがおすすめ!】
「クロエ・ドール」に登場する『りかさん』や、「『ダレカ』をさがす冒険」という物語に登場する『二分間の冒険』など、それぞれの物語の中に登場する本は、どれも本当にある本です。物語の中で登場人物が勇気づけられたり、夢中になって楽しんだりする様子を見ていると、きっとこれらの本も読んでみたくなるのではないでしょうか。
(2020.8.14up)
『フレンドシップウォー』
アンドリュー・クレメンツ∥著 田中奈津子∥訳 講談社 2020年7月
6年生になる女の子グレースは、夏休み、祖父が連れていってくれた古い工場で宝さがしをして、大量のボタンを見つけます。
夏休みが終わり、学校がはじまると、グレースは見つけたボタンをみんなに紹介。それをきっかけに、生徒たちはどんどんボタンに夢中になっていきます。学校中を巻き込んだボタンブームが起こりました。
そんな中、ボタンをめぐるいざこざが原因で、グレースは、2年生からずっと親友と思っていたエリーと仲違いし、戦いがはじまってしまいます。でも、ほんとうは仲直りしたいと思っていました。
ある日、グレースは、戦いをおさめようと、ある行動にでます。
【ここがおすすめ!】
ちょっとしたきっかけによる親友との仲違いはだれしも経験することかもしれません。
グレースは、仲直りしたいという一心で、思い切った行動にでます。そのあとどうなっていくのでしょう?友情の行方は?読み応えたっぷりです。
たくさん登場するボタン。材質は、ガラス製、貝殻、真鍮、木製、プラスチック、ピューター、革などあり、形も、丸、四角、三角、星、ネコ、チョウなどさまざまです。魅力たっぷりに描かれるボタンにも興味がわきます。(鷲山)
(2020.7.16up)
『わたしたちのカメムシずかん』
鈴木海花∥文 はたこうしろう∥絵 福音館書店 2020年5月
「カメムシ」と聞くと、たいていの人が、「わっ、あの臭い虫か」と顔をしかめますが、実は、模様のあるもの、形のかわったものなどいろいろな種類がいます。
岩手県の山あいの葛巻町にある全校児童29人の小さな小学校で、ある春の日、「カメムシはかせになりましょう!」という校長先生の提案で、児童たちはカメムシの名前など調べ始めました。
図鑑で調べて、見つけた日時、場所、気がついたことなどを記し、標本とともに廊下の壁にはりだします。
通学路、校庭の草むらなど、身のまわりでつぎつぎにカメムシが見つかり、冬には30種類をこえ、「顔みしり」のカメムシもどんどん増えていきました。
そうして、自分たちの見つけたカメムシのすべてがのっている「カメムシずかん」をつくりました。
【ここがおすすめ!】
子どもたちが1年間に見つけたカメムシは35種類。
カメムシを見つけ、図鑑で調べるうちに、子どもたちのカメムシへの興味がどんどん深まっていき、ついには「せんせー、カメムシはぼくたちの宝ものだねっ」となる様子に、調べることの楽しさ、知る喜びが伝わってきます。
どうしてくさいの?どうして集まるの?など、カメムシの生態についてもわかりやすく紹介されています。(鷲山)
(2020.6.11 up)
『名探偵カッレ 地主館の罠』
アストリッド・リンドグレーン∥作 菱木晃子∥訳 平澤朋子∥絵 岩波書店 2020年4月
名探偵にあこがれる少年カッレが、大人顔負けの推理力を発揮して事件を解決する探偵物語の第2巻。
前作『名探偵カッレ 城跡の謎』での宝石泥棒事件から1年後の夏休み、カッレは親友のアンデッシュ、エヴァロッタとともに、仲よしの赤バラ軍との戦争ごっこを楽しんでいました。
ところが、地主館の前で起きた殺人事件の犯人をエヴァロッタが目撃してしまったことで、平和な日常が一変。
カッレはエヴァロッタの命をねらう犯人に立ち向かうことになります。
【ここがおすすめ!】
仲間内だけで通じる秘密のしゃべり方、特別な「聖像」(本当はただの石ころ)の奪い合い、夜の町をかけぬけての攻防戦などなど、全力でくり広げられる戦争ごっこの様子にまずハラハラワクワクさせられます。そして、カッレらが文字通り命がけで殺人犯に立ち向かうシーンは非常にスリリング!戦争ごっこで経験したことがきちんと事件解決につながっていくところも爽快です。子ども向けの探偵物の傑作と言っても過言ではない作品です。
(2020.5.12 up)
『かなへび』
竹中践∥ぶん 石森愛彦∥え 福音館書店 2020年4月
トカゲの仲間で日本中の野原にいる”かなへび”。
かなへびの一日は、朝、葉っぱについたあさつゆを飲むことから始まります。
昼間はえものを探し、夜は葉っぱの上や落ち葉の下で眠ります。
敵がとびかかってくれば、しっぽを切り離し、相手がしっぽに気をとられているすきに逃げ出します。
小さなかなへびが生きる姿を描く科学絵本。
(2020.4.22 up)
『おひめさまになったワニ』
ローラ・エイミー・シュリッツ∥さく ブライアン・フロッカ∥え 中野怜奈∥やく 福音館書店 2020年2月
コーラ姫はうんざりしていました。
王様とお妃様から「りっぱな女王になるため」と、1日3度のお風呂、退屈な勉強、いつも同じ運動をつめこまれて、自由に遊ぶひまなんかないからです。
そんな姫を助けに来たのは、シュークリームといたずらが大好きなワニ。
1日だけでも自由に遊びたいという姫のために、ピンクのドレスを着て姫になりすましますが、おとなしくしているわけがなく…。
『お蚕さんから糸と綿と』 大西暢夫∥著 アリス館 2020年1月
かつて日本中で育てられてきた蚕。蚕が吐き出す繊維が、生糸になり真綿にもなります。
繭1個の繊維は長いもので1500mほどになり、繭20個ほどの繊維を合わせて撚って絹糸になります。
本書は、滋賀県と岐阜県の境にある集落に、今では一軒だけ残った養蚕農家が、蚕を育て、繭から糸をつむぎ、真綿をつくる過程を丁寧に追った写真絵本です。
糸や綿が命あるものから作られ、人々は暮らしを豊かにしてきたことに気づかされます。
『はじまりはたき火』
まつむらゆりこ∥作 小林マキ∥絵 福音館書店 2020年1月
大昔、火を恐れていた人間ですが、暮らしに火を使うようになり、暗い夜が明るく、寒いときは暖かくなりました。
やがて、金属の道具を作り、蒸気機関、発電機を発明し、電気をつくりどんどん文明が発展しました。
しかし、石油などを使いすぎ、環境問題が起こりました。
著者は「世界中の人たちといっしょに考えれば、きっと地球を大切にする道がみつかるはず」と述べています。
人間のくらしについて考えるきっかけとなる1冊。
(2020.4.10 up)
『
デイビッド・マックチーバーと29ひきの犬』
マーガレット・ホルト∥ぶん ウォルター・ロレイン∥え 小宮由∥やく 大日本図書 2020年1月
あたらしい町にひっこしてきたばかりのデイビッドは、はやく友だちがほしいと思っていました。
そんなとき、おつかいをたのまれたデイビッドは、帰るとちゅうで買ったお肉を落としてしまいます。
すると、たくさんの犬が集まってきて、デイビッドの後をついてきました。
それを見た町の人たちは、ゆかいなパレードだと思って、いっしょになってついてきます。
最後は町じゅうが大行進に。デイビッドはすっかり有名人になりました!
『
まぼろしの小さい犬』
フィリパ・ピアス∥作 猪熊葉子∥訳 岩波書店 2020年1月
ロンドンに住む少年ベンは、誕生日におじいさんから犬をもらうのを楽しみにしていました。
ところが送られてきたのは本物の犬ではなく、犬の絵で、ひどく落胆したベンは、自分の空想の中で犬を飼い始めます。
忠実で賢く、とても小さいのに百匹のオオカミに立ち向かえるほど勇敢な、想像の中にしかいない犬を。
次第にまぼろしの中の犬を「見る」ことに夢中になっていくベンでしたが…。
『
琉球という国があった』
上里隆史∥文 富山義則∥写真 一ノ関圭∥絵 福音館書店 2020年2月
今の沖縄県が沖縄県になったのは、明治時代になってから。
それまでは、「琉球王国」という国で、王様が治めており、王様は首里城にすんでいました。
琉球王国は、中国などとの貿易で栄え、アジアの国々との交流の中から、独特の文化も生まれました。
本書は、豊富な写真に丁寧な文章でかかれ、首里城や琉球王国の歴史を知る入門書におすすめ。