子ども室おすすめものがたりコーナーから本をピックアップしてご紹介します。
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(2024.4.24up)
『足音がやってくる』マーガレット・マーヒー∥作 青木由紀子∥訳 岩波書店「何の前ぶれもなく、ごくふつうの金曜日に」8歳の少年バーニーは、幽霊に取りつかれてしまいます。その幽霊は「バーナビーが死んだ!」とバーニーに告げます。家に帰るとバーナビー大叔父が亡くなったという知らせが入っていました。バーニーの家族が週末になってスカラー家にお悔やみに行くと、バーニーはスカラー家の人たちから不可解な視線を受けることに。怯えるバーニーの身に次々と奇怪な現象が起こり、バーニーは幽霊の存在をだんだん近くに感じ、そしてとうとう足音が聞こえてきます。恐ろしい超自然現象を描きながらも、家族関係の中で登場人物それぞれの思いや行動がリアルさをもって語られます。1983年のカーネギー賞受賞作。(中学生から)『小さい魔女』オトフリート・プロイスラー∥作 大塚勇三∥訳 学習研究社 学研教育出版むかし、ひとりの小さい魔女がいました。年はたったの127歳で魔女たちのなかではまだまだ新米でした。それで一人前の大きい魔女たちが、年に一度、集まって踊るワルプルギスの夜には参加できないことになっていました。それでも小さい魔女は、気持ちを抑えきれず、ワルプルギスの夜に出かけて、見つかってしまいますが、小さい魔女は機転を利かせ、“よい魔女”になったら来年は一緒に踊ってもいいという約束を、魔女のかしらからとりつけます。それからの一年、小さい魔女は、魔女の修行に励み、いろんな魔法を使って困っている人たちを助けます。無邪気で、そそっかしくて、気のいい小さい魔女の一年を楽しく描いたドイツの児童文学。(小学校3・4年生から)『鬼の橋』伊藤遊∥作 太田大八∥画 福音館書店平安初期に実在した貴族小野篁(おののたかむら)の少年時代を描いた歴史ファンタジー。12歳の篁は、古井戸に落ちて死んでしまった妹を思い、失意の日々を送っていました。ある夏の日、篁はその古井戸から冥界の入り口に迷い込んでしまいます。あの世にむかう橋を渡っていくと鬼に襲われますが、三年前に亡くなった征夷大将軍坂上田村麻呂が篁を助けてくれます。田村麻呂は、鬼から都を護れという帝の命を受け、あの世への橋を渡れずにいたのでした。都に戻った篁は、人夫だった父がつくった橋の下で暮らす女の子阿子那(あこな)や鬼のような大男非天丸(ひてんまる)との交流をとおして、死んでしまった妹、その死に冷淡な父、冥界の入口を彷徨う田村麻呂のことを考え、次第に大人になっていきます。(小学校5・6年生から)『エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする』エリナー・ファージョン∥作 シャーロット・ヴォーク∥絵 石井桃子∥訳 岩波書店ケーバーン山の麓のグラインド村のエルシー・ピドックは生まれながらのなわとび上手。エルシーが六つになるころには、その評判はどの村にも知れわたり、七つになるころにはケーバーン山に住む妖精も評判を聞きつけ、エルシーに妖精の秘術を授けることにしました。どの妖精よりもなわとびが上手になったエルシーは、三日月の晩にはいつもケーバーン山で、みんなでなわとびをするというしきたりをつくります。村の子どもたちは、それを何よりの楽しみにしていました。それからずいぶん長いときがたったある日、新しく荘園にやってきた領主は、村人たちのケーバーン山への出入りを禁止するというお触れをだしますが・・・。(小学校1・2年生から) 『魔女がいっぱい』ロアルド・ダール∥著 クェンティン・ブレイク∥絵 清水達也、鶴見敏∥訳 評論社夏休みに大好きなおばあちゃんと海辺のホテルで過ごすことになったぼくは、イギリスの魔女が全員参加する年に一度の秘密集会に紛れ込んでしまいます。この魔女たちは、子どもが大嫌いで、自分の縄張りの中にいる子どもをひとりひとり消していくのを最高の楽しみにしていました。そこで、その秘密集会では、世界魔女集団の大魔女が、魔女たちにイギリス中の子どもたちをネズミにかえてしまう恐ろしい計画を遂行するよう命令していました。ちょっぴり怪奇でユーモラスな挿絵は、刺激的で痛快なストーリーにぴったりです。「ロアルド・ダールコレクション」にも所収されていますが、1987年発行の単行本をおすすめします。(小学校3・4年以上) (2023.12.3up)
『火曜日のごちそうはヒキガエル(ヒキガエルとんだ大冒険 1)』ラッセル・E.エリクソン∥作 ローレンス・ディ・フィオリ∥絵 佐藤凉子∥訳 評論社掃除が得意なウォートンと料理上手なモートンはヒキガエルの兄弟。二匹は土の中の居心地のいい家に住んでいます。ある冬の日、ウォートンは、モートンが作ったおいしいデザートをトゥーリアおばさんに届けることを思いつきます。ウォートンは、モートンが止めるのも聞かずに、雪が積もって冷たい風が吹く中、スキーを履いて出かけますが、途中でずるくていやらしい奴だと噂のミミズクに捕まってしまいます。ミミズクは、ウォートンを自分の巣に連れていき、6日後の火曜日に誕生日のごちそうにするといいます。ウォートンとモートンの兄弟が活躍する「ヒキガエルとんだ大冒険」シリーズは全7巻。(小学校1・2年生以上)
ルーシー・M.ボストン∥作 ピーター・ボストン∥絵 亀井俊介∥訳 評論社
お母さんを亡くした少年トーリーは、2番目のお母さんに打ち解けることができず、遠く離れた寄宿学校に入っていました。
7歳の冬休みにトーリーは、ひいおばあさんに招かれ、イギリスで一番古いお屋敷のひとつであるグリーン・ノウで過ごすことになります。
暖かくおちついた雰囲気のお屋敷と、やさしく、元気で、いたずらっぽくもあるひいおばあさんオールドノウ夫人と出会い、トーリーは自分の居場所をみつけます。そして、この屋敷で300年も前に生きていた子どもたちトービー、アレクサンダー、リネットとの不思議な交流がはじまります。
グリーン・ノウを舞台にした子どもたちの物語は全6作品あります。
(小学校5・6年生以上)
『こども世界の民話 上』『こども世界の民話 下』内田莉莎子、君島久子、山内清子∥著 鈴木悠子∥画 実業之日本社世界のさまざまな国や民族の昔話を上下巻それぞれ21話ずつ集めた昔話集。病気のおくさんのためにサルの生き肝を手に入れようとするワニと取られまいと機転をきかすサルとのやりとりが楽しい「さるのきも(タイの民話)」。豆から生まれた女の子マメ子が、賢く、勇ましく魔物を退治する話「マメ子と魔もの」など幅広い年代の子どもたちが楽しめるお話ばかりです。本書は、『子どもに聞かせる世界の民話』(実業之日本社)から、子どもが自分でも読めるように再構成したものです。(小学校1・2年生以上) 『三国志 上(岩波少年文庫)』『三国志 中(岩波少年文庫)』『三国志 下(岩波少年文庫)』羅貫中∥作 小川環樹、武部利男∥編訳 岩波書店中国の漢王朝末期から魏・呉・蜀の三国時代をへて、晋の統一までの100年あまりの歴史を綴った物語。羅貫中作の『三国演義』の翻訳。政治が腐敗し世の中が乱れる中、「賊をたいらげて人民を安らかにしたい」という志のもと、玄徳、関羽、張飛の3人が兄弟の契りを結ぶ「桃畑の誓い」から100年の物語が始まります。魏の曹操、呉の孫権、蜀の玄徳、「三顧の礼」で迎えられた軍師孔明をはじめとする個性あふれる英雄豪傑が次々と登場し、それぞれが策略をめぐらし武勇を轟かせていく姿をドラマティックに描きます。各巻冒頭に主要人物の紹介や地図の掲載もあり、「三国志」の初読者にもおすすめです。
(中学生以上)
『エーミールと探偵たち(岩波少年文庫)』エーリヒ・ケストナー∥作池田香代子∥訳 岩波書店母さんと二人暮らしの少年エーミールは、お休みに、おばあさんの住むベルリンにひとりで出かけることになります。おばあさんに渡すようにと母さんから大切なお金を預かったエーミールは、ベルリンに向かう列車の個室で、居眠りしてしまいます。目が覚めた時には、お金がなくなっていて、同じ個室にいた山高帽をかぶった男の人もいませんでした。エーミールは、列車を降り、あやしい山高帽の男を追いかけます。そして、その途中で出会ったグスタフとその仲間たちとともに、ベルリンの街を犯人追跡に駆け巡ります。少年たちの知恵と行動力にあふれた追跡劇を、ユーモアとスピード感をもって描いた物語です。続編に、エーミールたちが大人に少し近づいた2年後を描く『エーミールと三人のふたご』があります。(小学校4・5年生以上) 『ミス・ビアンカくらやみ城の冒険(岩波少年文庫)』マージェリー・シャープ∥作 渡辺茂男∥訳 岩波書店大使館の坊やに飼われている優雅で美しい白ねずみのミス・ビアンカと、控え目だけどまじめで勇敢な家ねずみバーナード、ノルウェーの海賊ねずみニルスの3匹は、世界中のねずみで組織されている「囚人友の会」総会の決定を受けて、断崖絶壁に建つ「くらやみ城」から、とらわれの詩人を救い出すことに…。知恵と勇気をもった3匹それぞれの働きで、不可能に思える任務が遂行されていくストーリーに引き込まれます。ミス・ビアンカシリーズは、岩波少年文庫版では他に『ダイヤの館の冒険』『ひみつの塔の冒険』の2作が、単行本では全7作が出版されています。(小学校4・5年生以上)『おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ』
ジャンヌ・ロッシュ=マゾン∥さく 山口智子∥やく 堀内誠一∥え 福音館書店昔、あるブナ林に11ぴきの子リスの兄弟とおばあさんが一緒にすんでいました。一番小さな子リスのゲルランゲは、少し怠け者で、強情でしたが、とても元気で、ひょうきんで、すばしこくて、かわいい子リスで、だれでも好きにならずにはいられませんでした。毎晩、ゆうごはんがすむと、子リスたちは片付けや掃除をしましたが、ゲルランゲは掃除をするのが好きではありませんでした。ゲルランゲは、「ごはんなんかいらない。野宿したっていい。オオカミにたべられたっていい。でも、ぼく、おそうじはおぼえたくないや」と強情を言って、とうとうおばあさんに家を追い出されてしまいます。ひとりでブナ林をすすむゲルランゲは、オオカミに出会ってしまいますが・・・。ゲルランゲに振りまわされるオオカミがユーモラスなフランスの物語。続編に『けっこんをしたがらないリスのゲラルンゲ』があります。(小学校1・2年生以上)『ふたごの兄弟の物語 上』『ふたごの兄弟の物語 下』
トンケ・ドラフト∥作 西村由美∥訳 岩波書店「ふたしずくの水のように」そっくりだけれど、性格は全く違うふたごの兄弟の物語。貴金属細工師の修業にはげむ兄ラウレンゾーと、歌と冒険が大好きで、広い世界に出て幸運をつかみたい弟ジャコモ。ふたりは銀のジョッキの盗難事件に巻き込まれたり、なぞなぞの騎士と勝負したり、盗まれた小麦粉の犯人捜しを頼まれたりと次々に難題にぶつかります。そのたびに、固い絆で結ばれたふたごは、そっくりなことを利用して、その難題を解決していきます。昔話の雰囲気がある明るく愉快な冒険物語。小学生の読み聞かせにも使える一冊。(小学校5年生以上)『大どろぼうホッツェンプロッツ』オトフリート・プロイスラー∥作 フランツ・ヨーゼフ・トリップ∥絵 中村浩三∥訳 偕成社カスパールと友だちのゼッペルが、おばあさんの誕生祝いに贈った新式のコーヒーひきが、ある日大どろぼうホッツェンプロッツに盗まれてしまいます。カスパールとゼッペルは、二人でこの大どろぼうを捕まえようと知恵を絞り、警察が2年半もつきとめられなかったホッツェンプロッツの隠れ家に近づきます。ところが二人の計略に気づいたホッツェンプロッツは、逆に罠をしかけ、二人を捕まえてしまいます。スリル満点のストーリーとユーモラスで印象的な登場人物が楽しいドイツの作品。続編の『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』『大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる』もおすすめします。(小学校3年生以上)
『
銀のうでのオットー』
ハワード=パイル∥作 渡辺茂男∥訳 童話館出版13世紀のドイツを舞台にした歴史小説。このころ、ドイツでは皇帝の力が弱まり、たくさんの諸侯や城主により争いや略奪が繰り返されていました。主人公オットーは、略奪を生業とする竜の館の城主コンラッド男爵の一人息子として生まれます。母親はオットーを産むとすぐに亡くなってしまい、生まれたばかりのオットーは、父親の手で僧院に預けられます。僧院長やジョン修道僧たちにとともに、静かでおだやかな生活を送りますが、12歳になると父親は、オットーを迎えにやってきます。そして竜の館の住人となったオットーは父親を恨む敵に捕らえられ、過酷な運命にさらされることになります。暗黒時代とよばれる中世ドイツを、緊張感と迫力のあるストーリーで描き、充実した読後感を味わえる一冊です。イラストレーターとしても著名な作者が描く挿絵も印象的。(小学校5年生以上)
(2022.12.17 up)
『くまのパディントン』マイケル・ボンド∥作 ペギー・フォートナム∥画 松岡享子∥訳 福音館書店ある夏の日、ブラウン夫妻は、ロンドンのパディントン駅で、古いスーツケースの上に腰かけて、帽子をかぶった小さなクマに出会います。ペルーから密航してきたというそのクマの首には、「どうぞこのくまのめんどうをみてやってください。おたのみします。」という札が吊るされていました。放っておけないブラウン夫妻は、このクマに「パディントン」と名前をつけて、家族の一員に迎えることにします。パディントンは、礼儀正しく正義感の強いクマなのですが、好奇心旺盛で、思い立つとすぐに行動し、どこへ行っても、何をしても大騒ぎを起こします。お風呂場ではお湯を溢れさせ、百貨店に行けばショーウインドウをめちゃくちゃにし、海では迷子になり…。
次々にひきおこされる愉快な騒動が楽しいパディントンのシリーズは全10巻。(小学校3年生以上)『シャーロットのおくりもの』E.B.ホワイト∥作 ガース・ウイリアムズ∥絵 さくまゆみこ∥訳 あすなろ書房生まれたときに小さくて殺されそうになった子ブタのウィルバーは、8歳の女の子ファーンに助けられ、ザッカーマン農場の古くて大きな納屋で暮らすことになります。納屋の南側のぬくぬくとあたたかい場所で、丸々と太っていくウィルバーは、ある日、美しく頭のいい蜘蛛のシャーロットと友達になります。やがて、ウィルバーがハムやベーコンにされる運命だとわかると、シャーロットはウィルバーに「助けてあげる」と約束をします。そして、最後まで友達を思い、驚くような「奇跡」を起こします。1952年にアメリカで出版された動物ファンタジーのロングセラー作品。(小学校4年生以上)
『長くつ下のピッピ』
アストリッド・リンドグレーン∥作イングリッド・ヴァン・ニイマン∥絵菱木晃子∥訳岩波書店
ピッピ・ナガクツシタは、片方は茶色、もう片方は黒の長靴下をはいた世界一強くて自由な9歳の女の子。
スウェーデンの小さい町の「ごたごた荘」という古い家に、サルのニルソン氏と、馬といっしょにやってきます。
となりの家に住むトミーとアニカは、ピッピのことがすぐに大好きになります。
子どもひとりで暮らすピッピを「子どもの家」に無理やり連れて行こうとするおまわりさんと「おにごっこ」したり、ためしに行った学校で先生を散々に困らせたり。型破りでハチャメチャだけど心やさしくまっすぐなピッピのユーモアあふれる物語です。
2018年に、作者が気に入っていたという原書と同じ挿絵を採用し、新たに翻訳されたシリーズ1冊目です。
続刊に『ピッピ 船にのる』『ピッピ 南の島へ』があります。
(小学校3・4年生以上)
(2021.7.7 up)
『いたずらぎつね』
中川李枝子∥文 山脇百合子∥絵 のら書店
むかしむかし、小さなお寺に和尚さまと小僧さんが住んでいました。
和尚さまが、いつもいたずらギツネにだまされて大変な目にあうので、小僧さんはキツネをこらしめようと計画します。うまくキツネをおびきだし、捕まえることに成功した小僧さんでしたが…。
この表題作ほか、「ききみみずきん」など12編を収めた日本の昔話集。
「ぐりとぐら」シリーズを手がけた著者と画家による文章と絵が親しみやすく、読んであげるなら5歳くらいから楽しめます。
シリーズに『ねこのおんがえし』もあり。
(小学1・2年生から)
『はじめてのキャンプ』
林明子∥さく・え 福音館書店
ちっちゃい女の子のなほちゃんは、重い荷物をもつこと、泣かないこと、まきを集めること、暗くてもこわがらないこと、そしてひとりでおしっこに行くことを約束して、大きい子たちのキャンプに連れて行ってもらい、一生懸命がんばります。
夜、テントでこわいお話を聞いたあと、みんなが寝てしまっても、なほちゃんはちっとも眠くありません。
そのうち、おしっこがしたくなって…。
はじめてのキャンプの達成感がいきいきと描かれます。
わかりやすい文章とたくさんの挿絵で小さい子にも親しみやすい一冊です。
(小学1・2年生から)
『しずくの首飾り』
ジョーン・エイキン∥作 猪熊葉子∥訳 岩波書店
ローラの名付け親となった北風は、きらきら光る雨粒が3つついた「しずくの首飾り」を誕生のお祝いに贈ります。
そして、毎年、誕生日がきたら一粒ずつ雨粒を増やす約束をします。
この雨粒の首飾りには、不思議な力がありました。
ローラは首飾りを身に着けていれば、雨に濡れず、強い風にも吹き飛ばされず、手をたたけば雨が止むのです。
ただし、決して首から外してはいけません。悪い運がやってくるからです。
ところが9つ目の雨粒をもらった年、その首飾りをうらやましく思った同級生のメグに盗まれてしまいます。
イギリスの女性作家によるファンタジー短編集。他7編。
(小学3・4年生から)
『太陽の木の枝-ジプシーのむかしばなし』
J.フィツォフスキ∥再話 内田莉莎子∥訳 福音館書店
勇敢なジプシーの若者が太陽の国へ行き、星と月と太陽をちりばめた光まばゆい木の枝を手に入れる表題作や、
おきさきが生んだ美しいまっ赤なバラの花が、ジプシーの若者の奏でるバイオリンの音楽によって美しいむすめとなる「バラの花とバイオリンひき」、
太陽のように金色に輝く髪の毛をもつ王女とジプシーの若者の愛の話「きりの国の王女」など、
ポーランドの作家による鮮やかな色彩に彩られたジプシーのユニークな昔話が22編入っています。
(小学3・4年生から)
『風にのってきたメアリー・ポピンズ』
P.L.トラヴァース∥作 林容吉∥訳 岩波書店
桜町通りのバンクス家に、ある日、東風に運ばれてメアリー・ポピンズがやってきました。
ちょっと風変わりで気取り屋の彼女は、バンクス家の4人の子どもたちジェイン、マイケル、双子の赤ちゃんジョンとバーバラの世話をすることになります。
階段の手すりの上を1階から2階にすべりあがったり、空っぽのバックからエプロン、せっけん、寝間着、折りたたみ式のベッドまで次々取り出したりする
メアリー・ポピンズに、子どもたちはすぐに夢中になり、いっしょに不思議な世界を体験します。
ファンタジーの古典的名作で、他に『帰ってきたメアリー・ポピンズ』『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』『公園のメアリー・ポピンズ』などがあります。
(小学4・5年生から)
『クローディアの秘密』
E.L.カニグズバーグ∥作 松永ふみ子∥訳 岩波書店
11歳の女の子クローディアは、弟たちに比べて家での不公平な待遇や、同じことの繰り返しの毎日にあきあきして家出することに。
でも、都会ぐらしのクローディアは、カッとなって家を飛び出してしまうような家出はしません。
家出に必要なお金を貯め、相棒に口が堅くてお金持ちの弟ジェイミーを選び、注意深く計画を立て、メトロポリタン美術館に家出します。
展示されている豪華だけどカビ臭いベッドに寝て、噴水のお風呂に入り、団体見学の小学生に交じって昼食を食べる家出生活を送るうち、美術館にミケランジェロの作品かもしれないという天使の像が特別に展示され、二人は、その謎を探りはじめます。
著者による挿絵が、登場する人物やストーリーの理解を助けてくれています。
(小学5・6年生から)
(2021.1.21 up)
『こぐまのくまくん』
E.H.ミナリック∥文 モーリス・センダック∥絵 松岡 享子∥訳 福音館書店
今日はくまくんのたんじょうびなのに、かあさんぐまがいません。
もうじき友達が来るのに、バースデーケーキもありません。
こまったくまくんは、お湯を見つけて、自分でスープを作り始めます。
みんなでスープを食べようとしたときに・・・。
くまくんとお母さんの、ゆったりとしたやりとりも楽しい、4つのお話です。
続編に『かえってきたおとうさん』『くまくんのおともだち』『だいじなとどけもの』『おじいちゃんとおばあちゃん』があります。
(小学1・2年生から)
『くまの子ウーフ』
神沢利子∥作 井上洋介∥絵 ポプラ社
あそぶのとたべるのが大好きなクマの子ウーフは、いろんなことを考えます。
なぜ魚には舌がないのか? ぼくは何でできているのか? いざというときってどんなとき? など9つの「どうして?」を考えます。
続編に『こんにちはウーフ』『ウーフとツネタとミミちゃんと』があります。
(小学2・3年生から)
『あしながおじさん』
J.ウェブスター∥作・画 坪井郁美∥訳 福音館書店
孤児院で育ったジュディは、あるお金持ちの紳士の援助で、大学に行かせてもらうことになります。
その条件は、月に一度、この紳士に手紙を書くことでした。
ただし、彼の名前は秘密で、返事ももらえません。
ジュディは、彼を「あしながおじさん」と呼んで、大学生活の様子や交友関係などを書き送り続けます。
前向きでユーモアあふれるジュディの手紙でできた物語。
恋愛の要素もあって、女の子の気持ちをひきつけます。福音館文庫版、岩波少年文庫版もあります。
(小学5・6年生から)
『ガラスのくつ』
エリナー・ファージョン∥著 石井桃子∥訳 岩波書店
お母さんを亡くした16歳のエラは、継母とふたりの義姉さんからいじわるされ、暗くて寒い地下室で女中のように暮らしていました。
あるとき、国じゅうの若い娘が王さまから舞踏会に招待されることになり・・・。
あの「シンデレラ」がモチーフの物語。
でもファージョン流に、にぎやかなドタバタ劇を見ているような華やかで愉快な物語に大変身。
エラも美しいだけでなく、空想好きの茶目っ気のある女の子に。
(小学5・6年生から)
『トムは真夜中の庭で』
フィリパ・ピアス∥作 高杉一郎∥訳 岩波書店
はしかにかかった弟ピーターから離れるため、トムはアランおじさんのところで夏休みを過ごすことになります。
友達もなく退屈にすごしていたトムでしたが、夜、大時計が13時をうつのを聞いてしまいます。
ドアを開けるとそこには、昼間はなかったはずの庭が。
1958年にアメリカのカーネギー賞を受賞したファンタジーです。岩波少年文庫版もあります。
(小学5・6年生から)
『秘密の花園』
F.H.バーネット∥作 猪熊葉子∥訳 福音館書店
インドで暮らすメリーは、両親にかまってもらえず、わがままで孤独な女の子でした。
10歳のとき両親が亡くなり、イギリスの気難しいおじさんの家に引き取られることになります。
大きな庭園が周りをとりまき、百ほども部屋があるお屋敷には、遊び相手が誰もいませんでしたが、ある日、入ってはいけないと言われていた場所から、子どもの泣き声が聞こえてきて・・・。
隠されていた庭を、以前のような花園へよみがえらせようとするメリー。
花園に春が訪れるクライマックスが印象的です。福音館文庫版、岩波少年文庫版(上、下)もあります。
(小学5・6年生から)
(2020.5.12 up)
『エルマーのぼうけん』
ルース・スタイルス・ガネット∥さく ルース・クリスマン・ガネット∥え 渡辺茂男∥やく 福音館書店
ある雨の日、ゆうかんな男の子エルマーは、のらねこから、どうぶつ島にとらえられている、かわいそうな竜の子の話を聞きます。
チューインガム、キャンデー、わゴム、じしゃく、はブラシ、サンドイッチ25こ、りんご6こなどをリュックにいれて、エルマーは竜の子を助けるため、ひとりでどうぶつ島へむかいます・・・。
続編に、『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』があります。
(小学1・2年生から)
『セロひきのゴーシュ』
宮沢賢治∥作 茂田井武∥画 福音館書店
町の活動写真館でセロをひくかかりのゴーシュ。
演奏が下手で、いつも楽長から叱られてばかりいます。
もうすぐ町の公会堂でのコンサートがひかえているゴーシュは、夜中までセロの練習をしているとそこに、一匹の三毛ねこがやってきて・・・。
次の晩にはかっこう、次はたぬき、野ねずみとやってくる動物たちとふしぎな練習をつむうちに、ゴーシュはどんどん上達していきます。
素朴なさし絵も魅力的です。
(小学2・3年生から)
『モグラ原っぱのなかまたち』
古田足日∥著 田畑精一∥絵 あかね書房
2年2組の仲良し4人組は、ちびのあきら、でぶっちょのなおゆき、背の高いかずお、くりくりっとした目のひろ子。
4人でみつけたモグラ原っぱで掃除機を使って虫取りをしたり、捨て犬を内緒で飼ったり。
ところがある日、モグラ原っぱにダンプカーがやってきて・・・。
読む人も、すぐともだちになれそうな楽しい話が10編入っています。
(小学2・3年生から)
『百まいのドレス』
エレナー・エスティス∥作 ルイス・スロボドキン∥絵 石井桃子∥著 岩波書店
貧しい女の子ワンダは、100枚のドレスをもっていると言ったことで、ひどくからかわれてしまいます。
学校一の人気者ペギーが中心になってワンダをからかいますが、ペギーとなかよしのマデラインは、それを止める勇気がでず・・・。
偏見や、それを乗りこえる勇気について考えさせる物語です。
(小学3・4年生から)
『チベットのものいう鳥』
田海燕∥編 君島久子∥訳 太田大八∥絵 岩波書店
サラの森に住む、金玉鳳凰を探し出し、国に連れ帰ることができれば、沈着な性格と強靭な精神が養成されると、王子が旅に出ます。
金玉鳳凰を連れ帰る途中、口をきくと魔法が解けてしまうのですが、金玉鳳凰は、王子に口をきかせようと、おもしろい話を自ら語って聞かせます。
金玉鳳凰と王子をめぐるお話の中に、いくつものお話が入り込んだおはなしです。
(小学5・6年生から)
『怪談』
小泉八雲∥作 平井呈一∥訳 偕成社
日本各地に昔から伝わるこわい話を集めた短編集。
夜、幽霊に誘い出されて平家物語を語りに行く芳一の身を守ろうと、和尚さんは芳一のからだ中にお経を書くよう納所(なっしょ)に命じます。
ところが、耳だけ書き忘れ、幽霊に耳をとられてしまう「耳なし芳一の話」など、全部で19話。
(中学生から)
(2020.4.23 up)
『チム・ラビットのぼうけん』
A.アトリー∥作 石井桃子∥訳 中川宗弥∥画 童心社
子ウサギの男の子チムは、はさみを見つけて、「なんでも」切ってしまいます。
毛布、テーブルかけ、タオル、それから自分の毛!
毛がなくなったチムは、きみょうな白い動物になってしまい、おかあさんに白ねずみだと思われてしまいます・・・。
いたずら好きのチムのゆかいな9つの話。
続編に『チム・ラビットのおともだち』があります。
(小学1・2年生から)
『番ねずみのヤカちゃん』
リチャード・ウィルバー∥さく 松岡享子∥やく 大社玲子∥え 福音館書店
ドドさんの家に住んでいるのは、おかあさんねずみと4ひきの子ねずみ。
3びきはおとなしくてしずかですが、4ひきめは「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
ヤカちゃんの大声で、ねずみがいることに気がついたドドさんが、ねずみとりのわなをしかけたり、ネコをかったりしますが、ヤカちゃんの大声が、げきたいします。
あるひ、ドドさんの家にどろぼうが入り・・・。とびきりゆかいな話。
(小学1・2年生から)
『
あたまをつかった小さなおばあさん』
ホープ・ニューウェル∥作 松岡享子∥訳 山脇百合子∥画 福音館書店
小さなおばあさんは、困ったことがあると、ぬれタオルで頭をしばり、イスにすわって、ひとさし指をはなの横にあて、目をつぶって頭をつかいます。
こうやって知恵をはたらかせて、羽ぶとんを手に入れたり、ねずみからトウモロコシを守ったりするのです。
いつも楽しいことを考えつくおばあさんの、ゆかいな8つのお話です。
(小学2・3年生から)
『
くしゃみくしゃみ天のめぐみ』
松岡享子∥作 寺島竜一∥画 福音館書店
「くしゃみくしゃみ天のめぐみ」は、牛や馬までふきとばすほど、すごいくしゃみをする「くしゃみのおっかあ」の息子「はくしょん」が、くしゃみのおかげで長者の娘の婿になるという話。
ほかに、「とめ吉のとまらぬしゃっくり」「かん太さまのいびき」「梅の木村のおならじいさん」など、昔話ふうの、5つの面白い話が入っています。
(小学2・3年生から)
『火のくつと風のサンダル』
ウルズラ=ウェルフェル∥作 関楠生∥訳 久米宏一∥絵 童話館出版
7歳の少年チムは、デブでチビとからかわれるのがいやでたまりませんでした。
そこで靴屋のお父さんは、チムの誕生日にすてきなプレゼントを考えます。
それは、お父さんとチムのふたりで、歩いていく4週間の旅行でした。
お父さんは「風のサンダル」、チムは「火のくつ」と名乗り、くつを直しながらの、旅行がはじまります。
(小学3・4年生から)
『魔法使いのチョコレート・ケーキ』(福音館文庫版)
マーガレット・マーヒー∥作 シャーリー・ヒューズ∥画 石井桃子∥訳 福音館書店
魔法使いがチョコレート・ケーキ・パーティーを開いて町じゅうの子どもたちを招待しましたが、だれもやってきません。
がっかりした魔法使いは、リンゴの木といっしょにケーキを食べ、木を植えました。
時は流れ、魔法使いが植えた木々は森になり、町の博物館で招待状を見たという子どもたちがやってきて・・・。
ほかに「たこあげ大会」「幽霊をさがす」など、8つの物語と2つの詩がはいっています。
(小学4・5年生から)
『オンネリとアンネリのおうち』
マリヤッタ・クレンニエミ∥作 マイヤ・カルマ∥絵 渡部翠∥訳 福音館書店
九人兄弟の真ん中のオンネリと両親が別居中のアンネリは、大の仲良し。
夏休みに、家族の中で居場所のない二人は、ひょんなことから小さな家を手に入れました。
すてきな家具やキッチン、洋服もあれば、食べ物もあります。
二人はちょっと変わったご近所さんと交流しつつ、楽しい夏休みを過ごします。
女の子にオススメの一冊です。
(小学4・5年生から)
『
ふたりのロッテ』
エーリヒ・ケストナー∥作 池田香代子∥訳 岩波書店
9歳の女の子ルイーゼは、夏休みの林間学校で、自分とそっくりな女の子、ロッテに出会います。
二人はそのとき初めて、自分たちがふたごの姉妹だということを知りました。
両親が二人の小さいころに離婚したため、ルイーゼはお父さん、ロッテはお母さんのところで育ったのです。
二人は、こっそり入れかわって、おたがいの親のところへ帰る計画を立てます。
活発なルイーゼと、おとなしい優等生のロッテ、二人の入れかわりはうまくいくでしょうか。
(小学4・5年生から)
『
人形の家』
ルーマー・ゴッデン∥作 瀬田貞二∥訳 岩波書店
トチーは百年以上前に作られた、小さな人形の女の子です。
トチーと人形の家族たちは、持ちぬしのエミリーとシャーロットに大切にされ、幸せにくらしていましたが、ちゃんとした家がないことがなやみでした。
ある日、エミリーたちに、トチーが百年前に住んでいたりっぱな人形の家がおくられることになります。
人形たちはよろこびますが・・・。
人形たちの個性や暮らしの様子がはっきりえがかれ、その喜びや悲しみが胸にせまる物語です。
(小学5・6年生から)
『
飛ぶ教室』
エーリヒ・ケストナー∥作 池田香代子∥訳 岩波書店
ドイツのギムナジウム(高等中学)に通う男の子たちにある冬起こった出来事の数々。
実業学校の生徒に友だちを閉じ込められた寄宿舎(学校の寮)の生徒たちは、友だちを助けるために、規則をやぶります。
寄宿舎の先生は、生徒たちの気持ちをよく考えてくれる先生。
生徒たちとやさしい先生との日々をえがいた学園ストーリーです。
(小学5・6年生から)
『
ツバメ号とアマゾン号 上』『
ツバメ号とアマゾン号 下』
アーサー・ランサム∥作 神宮輝夫∥訳 岩波書店
イギリスの湖沼地方。夏休みにウォーカー家のきょうだい4人は、子どもだけで無人島にキャンプすることを許されます。
小さな帆船「ツバメ号」を操り、冒険を満喫する4人。
そこへ、アマゾン海賊を自称するブラケット家の愉快な女の子ふたりが、アマゾン号で戦いを挑んできます。
ヨットの操縦法、キャンプの方法など等身大の冒険を具体的に描く作品。
この本は、全12巻からなるシリーズの1巻目にあたります。
(小学5・6年生から)