ミニ展示「福井藩のお札-藩札デザインのひみつ-」

開催期間・場所2024年6月28日(水)~2024年8月28日(水)
9:00~17:00 福井県文書館閲覧室(入館無料)
概要 2024 年(令和 6)7月3日、20 年ぶりにデザインが変更された新紙幣が発行されます。このような改刷によるデザイン変更は、江戸時代に福井藩が発行していた藩札においてもおこなわれていました。これらの藩札は現在使われている紙幣の先駆けとも呼べるものです。そこで、本展示では文書館が所蔵する福井藩藩札から、現在の紙幣につながるデザインの工夫について紹介します。

目次

  1. 福井藩 藩札(文化年間発行 十匁銀札)
  2. 福井藩 藩札(文化年間発行 二匁・三匁・五匁・十匁銀札)
  3. 福井藩 藩札(文化年間発行十匁銀札 万延年間発行十匁・二十匁銀札)

藩札とは?

 江戸時代には、江戸幕府によって金・銀・銭貨という三つの貨幣が発行され、流通していました。しかし、地域によっては貨幣が行き渡らないなど、様々な問題を抱えていました。そこで、各藩は貨幣の代わりとして主に領内で使用できる紙幣を発行しました。それが藩札と呼ばれるものです。 福井藩による藩札の発行は全国でもかなり早く、寛文元年 (1661)8 月に発行されることが決定しています(越葵えっき文庫 『家譜かふ 』六)。この福井藩による藩札発行が契機となり、諸藩による藩札の発行は大きく進展していきます。


1. 福井藩 藩札(文化年間発行 十匁銀札)

1. 福井藩 藩札(文化年間発行 十匁銀札) 文化年間(1804 ~ 18)に発行された福井藩の藩札(十もんめ銀札)です。紙幣の表面中央に銀十匁と墨書されているように、銀十匁の代わりとして使われました。銀十匁はおおよそ 37gの銀と同じ価値となります。
 また、藩札の上部を紙紐で一括して使う場合も多かったようです。現存している藩札の多くには上部に穴があけられていますが、これは紙紐で綴った跡です。
(当館蔵 内田吉左衛門文書 江戸時代 5.0 cm×17.2 cm)

2. 福井藩 藩札(文化年間発行 二匁・三匁・五匁・十匁銀札)

2. 福井藩 藩札(文化年間発行 二匁・三匁・五匁・十匁銀札)

 文化年間発行の藩札を額面が異なるもので並べてみました。僅かですが藩札のサイズが違います。右下の十匁銀札がこの中では一番高額の藩札で す。高額になるにつれて、サイズも大きくなっていました。一括して使う際や数える際の利便性から、このような工夫がなされたと考えられます。
 また、福井藩の藩札上部には、如意宝珠にょいほうじゅがデザインされています。この宝珠の数や大きさは藩札の額面と連動していました。おそらく、識別性の向上や文字が読めない人々でもある程度使用できるようにした工夫と考えられます。こうした識別性向上のための工夫は、ユニバーサルデザインという形で現在の紙幣にも受け継がれています。
(当館蔵 内田吉左衛門文書 江戸時代)

▼ 三匁銀札の如意宝珠 ▼ 五匁銀札の如意宝珠パネル2画像

3. 福井藩 藩札(文化年間発行十匁銀札 万延年間発行十匁・二十匁銀札)

3. 福井藩 藩札(文化年間発行十匁銀札 万延年間発行十匁・二十匁銀札)

 文化年間(1804 ~ 18)に発行された藩札と、約 50 年後の万延年間(1860 ~ 61)に発行された藩札を並べてみました。基本的なデザインに変更はありませんが、細部のデザインが異なります。例えば、恵比寿のデザインはより写実的になっていますが、それだけではなく髭や抱えている鯛の鱗が緻密になっていることがわかります。藩札は主に木版で刷られていましたが、単純なデザインのものは偽札も多く出回りました。原版のデザインをより緻密にすることで、藩札の偽造を防ごうとする工夫がなされていました。
(当館蔵 内田吉左衛門文書および松田三左衛門家文書

▼ デザインの精緻化

パネル3画像





会場位置MAP

会場_文書館閲覧室