古文書目録活用のために
2023年7月12日更新
■はじめに■福井県史編さんにおける調査・撮影の概要
■目録作成と編集の経緯
■凡例
はじめに
資料群目録は、福井県文書館が所蔵する古文書資料のうち、閲覧利用が可能な家、団体、個人などの資料群について、その資料群ごとに年代、数量、作成主体の組織歴・履歴、概要などを記した目録である。
「古文書」とは、当館が収集保存の対象とする「県に関する歴史的な資料として重要な公文書、古文書その他の記録」(「福井県文書館の設置および管理に関する条例」)のうち、福井県から引き渡しをうける公文書以外の古文書その他の記録を指している。これらの資料のなかには一般的に古文書と考えられている近代以前のもののみならず、明治期以降の新しい時代の資料も少なくないが、一般にわかりやすい表現として「古文書」と総称している。
現在、資料群目録が整備され所蔵者の許諾をえて当館で閲覧・利用できるものは約千の資料群である。残りの約千の資料群については、未整理であり所蔵者の許諾を得ていないため、簡略な一覧表を巻末に掲載した。それらの地域別ごとの割合は表1「地域別資料群数」のとおりである。閲覧できる資料群は本目録刊行後も随時増えているので、最新の情報については、ホームページの目録データベースを参照していただくか、直接当館に問い合わせていただきたい。(➤県史収集資料未整理資料群一覧)
当館の古文書資料の利用にあたってまず留意いただきたいことは、その大半が1978年(昭和53)から開始された福井県史編さん事業(~1996年)において調査・撮影されたマイクロフィルムによる複製資料である点である。以下、当館の古文書資料の全般的な特徴を理解する上で参考となる福井県史編さんにおける調査・撮影の概要、目録作成と編集の経緯について説明したい。
福井県史編さんにおける調査・撮影の概要
福井県史の編さん事業は、1981年(昭和56)2月に置県百年を迎えることを記念して78年(昭和53)から開始され、1996年(平成8)3月までに『福井県史』全23巻25冊が刊行された。この事業は、県史の刊行のみならず、「本県の歴史的発展過程を顧みて将来の進むべき方向を展望し、郷土福井県に対する県民の関心を高めるとともに史料を永く後世に残し、併せて文化の向上と教育の振興に寄与することを目的」(「福井県史編さん基本要綱」)としており、この目的にそって広く県内外の古文書資料が調査・撮影された。福井県史編さん事業の体制・関係者、基本要綱・各部会の編さん計画要項、「編さん資料の調査・収集業務処理要項」、調査の概要などについては『福井県史』索引・県史編さん記録(1998年)を参照してほしい。
県史編さんにおける調査は、「史料所蔵者の居住地で行う」「史料は、現地保存を原則とする」(「編さん資料の調査・収集業務処理要領」)とされたため、ほとんどの調査は所蔵者宅あるいは寺院・公民館などの地域の施設で行われた。「家分け」(=出所の原則)をくずさないことは当初から調査の前提とされており、資料所蔵者の居住地で調査を行うという方針はそのための方策でもあった。同時に調査は「各市町村ならびに地域住民の協力のもとに『史料の現地保存』の立場をとりながら実施する」とされ、「県史編さん上、重要な史料であると判断した場合は、その史料の量的度合を勘案して業者または県史編さん室が写真撮影等し、永久的に保存しておく」(「編さん資料の調査・収集業務処理要項」)とされた。このため原資料が収集されることはなかった。
他方、県内の中世・近世の資料については「史料の発掘・保存のために悉皆調査を行う」(「近世史部会編さん計画要項」)とされた。この「悉皆調査」については精力的な所在調査が行われたものの、時間的・予算的な制約が大きく、かならずしも実現されたわけではなかった(隼田嘉彦「福井県史『近世編』の編さんを終えて」『福井県史研究』15、1997年)。
またマイクロフィルムによって撮影され複製が作成された資料は、県史編さん上重要であると判断された資料であり、所在が確認された資料全体に対するその撮影資料の割合も時々の予算に影響され地域的な偏りがみられた。量的には、編さん事業の早い時期ほど少なく、中・近世資料では福井市、吉田郡・坂井郡、鯖江市・丹生郡、武生市・今立郡・南条郡において撮影できなかった資料の割合が大きくなっている。
調査自体は中世・近世・近現代の部会ごとに計画・実施された。このうち中世史部会と近世史部会は密接に連絡をとり協同して調査を実施する場合が多かった。中・近世の資料編は福井市(1982年刊行)、吉田郡・坂井郡(84年刊行)、鯖江市・丹生郡(85年刊行)、武生市・今立郡・南条郡(87年刊行)、敦賀市・三方郡(89年刊行)、小浜市・遠敷郡・大飯郡(90年刊行)、大野市・勝山市・足羽郡・大野郡(92年刊行)の順で編さん・刊行されたため、当然調査もこの地域順で進められた。
これに対して近現代史部会では、明治期、大正期、昭和戦前期、昭和戦後期と時代ごとに資料編が編さんされたため、その調査に地域的な特徴はあまり見られなかった。
福井県史編さんの調査の概要は以上のとおりである。そこで当館所蔵の古文書資料の利用にあたっては、次の点に留意が必要である。
(1)本目録は資料群についての記述は、開館後寄贈・寄託を受けた資料群を除いて、大半がマイクロフィルムによる複製資料についてのものである。このため、県史編さんの過程で所在が確認されながら撮影されなかった資料がある場合にもその年代や内容を反映していない。
目録作成にあたって、所在調査の目録カードによって撮影されなかった資料の内容・点数がわかる場合には「資料群の概要」にその旨記した。やむをえず部分撮影を行っている場合、時代を近世・近代に限定した場合などは、そうしたコメントもあわせて記述している。
(2)福井市、越廼村、鯖江市、今立町、敦賀市、小浜市域の資料群については、自治体史編さんによって調査・作成されたマイクロフィルムを複製した場合がある。この場合には各自治体史の目録を尊重し、その資料名を活かした整理をおこなった。
目録作成と編集の経緯
本目録は、福井県文書館建設のための準備期間にあたる1998年4月から2003年2月の開館までに文書学事課公文書館建設準備グループ(2002年4月から文書館建設準備グループ)によって作成された、管理上のデータも含む当館の収蔵資料データベース(古文書家目録・資料目録・撮影記録)をもとに作成している。
準備段階では、国文学研究資料館史料館『史料館収蔵史料総覧』(1996年、名著出版)の項目構成を参考にしたが、当館の資料群のほとんどが複製資料であるという事情を考慮して、調査の経緯、マイクロフィルム、複製本、所蔵者・管理者の連絡先、公開許諾管理、台帳作成者などの管理上の項目をも加えたデータベース(Microsoft Access)を作成してきた。そして当館の情報システムがテスト段階に入った2002年4月以降に現在のデータベースに移行した。
データの作成にあたっては、地域的なバランスを考慮し『福井県史』資料編に掲載されている資料群から優先して整理することにした。目録整理の過程で出所を同一にするべき資料群が、こちらの調査・撮影時の手違いで複数の資料群番号、資料群名をもっている場合には、これを統合した。反対に何らかの事情で複数の出所の資料群がひとつの家や団体に伝来している場合には、所蔵者の明確な意向がある場合を除いてこれを分割することは行わなかった。
目録の内容は、当該資料群の資料目録を点検した担当者が、おもに『福井県史』資料編の解題や『福井県史』通史編の叙述等を参考に原稿を作成し、職員が相互に読みあって校正し作成した。
本目録はこの管理上のデータも含まれる収蔵資料データベースの項目から、「国際標準記録史料記述の一般原則(General International Standard Archival Description :ISAD(G))」第2版に準拠することを念頭に閲覧利用のための項目を選択し構成した。各項目については凡例を参照していただきたい。